マイクロパワハラ〜じわじわ信頼関係を壊す「パワハラ未満のパワハラ」

貴社の相談窓口に寄せられる相談や愚痴の多くは、「パワハラとまでは言えない」程度で、対処すべきか悩ましいケースが多いのではないでしょうか。

社員が人間関係を理由に離職するのは、「ちょっとした嫌味」「直言」「上司の不機嫌」などの「パワハラとまでは言えないけれども失礼な言葉・行為・態度」や「正しいけれども突き刺さる言葉」などの蓄積が原因であることが少なくありません。「言い方ってあるよね」「毎日だと嫌になるよね」というような。

ここではパワハラ未満のパワハラを「マイクロパワハラ」と称して、対策等をご紹介します。

「パワハラはないが、なぜか離職者が多い」場合、パワハラ未満の小さなパワハラが蓄積されていないか、チェックしてみてください。

※「マイクロパワハラ」は、当社が独自に使用している造語です。

マイクロパワハラ
©株式会社ケンズプロ

マイクロパワハラの例

  • 「ダメ」「これは使えない」「間違っている」など直球の指摘
  • 「早くしろ」「ちゃんとやれ」などの命令口調
  • 「なぜできない」「お前がやったのか」など問い詰めるような口調
  • 嫌味
  • (悪気ない)無視
  • 舌打ち
  • えこひいき
  • 機嫌にムラがある、またはいつも不機嫌
  • 呼び捨て・「お前」・「オイ」
  • (覚える気がなくて)名前を忘れる
  • 目を見て話さない
  • ため息
  • 予測できない上司の指示・思考
  • 期限ギリギリに出される指示
  • その都度変わる指示
  • ダメ出し・否定の連続
  • 秘密主義・情報共有がない
  • 上下関係に厳しく、ボトムアップの反論は許されない雰囲気
  • 完璧主義
  • 私語禁止
  • ノルマが厳しい
  • 派閥争いや社内で駆け引きがある、等

中には、禁止とするのも不適切かと思える微妙なものも含まれています。禁止という指導より、より信頼関係を深め部下を成長させる表現や態度を推奨する取組が、企業には求められます。

マイクロパワハラ〜マイクロストレスの蓄積が及ぼす影響

マイクロパワハラは、マイクロストレスを生み出します。マイクロパワハラやマイクロストレスは、蓄積すると、大きな影響を及ぼします。

  • 社員・部下が心身の健康を害する
  • 社員・部下が萎縮し、能力を発揮しなくなる
  • 社員・部下が離職する
  • 社員・部下が失敗や不明点を隠したり自己判断で対処したりするようになる
  • 違法行為や倫理違反行為を犯すようになる
  • 信頼関係・人間関係の崩壊
  • 以上により企業全体の業務の質が低下する
  • 業績悪化・倒産危機、等

組織に浸透させるべき文化・環境

マイクロパワハラによる影響を回避するために、以下のような、心理的安全性の高い、明るく前向きな職場環境を整えることが求められます。

  • わからないことはすぐに質問できる
  • 困ったときに相談できる
  • できないときにすぐに助けを求められる
  • 上司に意見を述べたり反論したりしても空気が悪くならない
  • 多数派と異なる少数意見も侮辱されない
  • 失敗を成功と成長につなげられる
  • 育つための機会、材料、道具が与えられている
  • 肯定的な発言が多い
  • 全員が中立的
  • 全員が平常心を保っている、等

企業が講ずるべき対策

上記のような文化・環境を浸透させ、社員の能力発揮を促し、離職を食い止めるには、「禁止」中心のパワハラ教育以上に、「コミュニケーション」「心理的安全性」「マナー」「倫理」「人材育成」の浸透対策が重要です。

  • 情報共有の仕組みを整える
  • 知識や技能を組織に共有した社員を評価する
  • 部下の成長・定着を管理職の評価基準とする
  • 「困っている人」「休む人」「忙しい人」をフォローした社員を評価する
  • 「世代間ギャップ」を埋め、「世代間理解」を促す研修、ワークショップ、討論会などを実施する
  • マナー、コミュニケーション、倫理に関する研修を全社員が受ける
  • 自社の「心理的安全性」を高めるための勉強会を定期開催する
  • 企業理念を、事あるごとにトップが発信し続ける
  • トップが「ポジティブな表現」を意識的に使い続ける
  • 新入社員の「教育係」のステータスを上げる。評価の高い人が教育係に任命される仕組み導入

マイクロパワハラの蓄積は、離職だけでなく、パワハラ以外のハラスメントや不正、不祥事、労災事故等をも引き起こします、
社員が、企業理念や顧客ではなく、上司や社長のために仕事をするようになるのです。

「パワハラはないから大丈夫」ではなく、小さな問題が起きたときにそれを放置せず、一つひとつをもぐら叩きのようにこまめに解消することで、大炎上を防ぐことが重要です。

行為者には、必要に応じて再教育を

企業の相談窓口にパワハラ相談があり、「パワハラとは認定されなかった」としても、それで終わらせてはなりません。
傷ついた社員、気になった社員がいること、それにより就業環境を害された社員がいることは事実なのですから、必要な場合は、マイクロパワハラの行為者に、コミュニケーションや管理職意識等の再教育を行うこと、全体へも再発防止策を講ずることが大切です。

個々人の心がけ

  • 言葉を発する前に一呼吸置き、「言葉は適切か」「相手を傷つけないか」「より良い表現はないか」考える。直前に考えられなければ、直後に考え、次に活かす。
  • “You should…”を手放す。「べきだ」「はずだ」という決めつけをやめ、多様性を受け入れ、尊重する。
  • 目下の人にこそ、横柄で失礼な態度をせず、礼儀正しく丁寧で親切な振る舞いを心がける。
  • 対話では信頼関係の構築に全力を注ぐ。自分の威厳や能力を誇示しようとするのは、逆に「コモノ」であると証明することになる。
  • 学べること、変化を受け入れられることを誇りとする。自らの無知を知り、知らないことを学ぶ意欲があること、時代の変化を受け入れ順応する謙虚さと柔軟性があること、若者を信頼し任せる度量の広さがあることを、自らの長所とする。

マイクロパワハラは、じわりじわりと人間関係の溝を広げ、やがては経営の根幹を揺るがすほどの大きな谷をつくります。
すでに企業の文化として定着してしまっている言動も含めて、「この会社の常識と日常」を、客観的な目線でチェックし、変革していくことが重要です。

※「マイクロパワハラ」は、当社が独自に使用している造語です。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ケンズプロは、パワハラ・セクハラ・ペイハラ・カスハラ等ハラスメント対策や女性活躍推進、採用ブランディングなどを支援する人事コンサルティング会社です。