介護に直面したら〜仕事と介護を両立するために

仕事と介護の両立をはかる方法を考えましょう。

まだ介護をしていない方へ〜日頃から心がけておくこと

介護はいつ始まるか分からないからこそ、いざというときに慌てないよう、事前にしっかりと準備しておきましょう。

  • 介護は、始まるタイミングを予測しづらいため、まだ始まっていないうちに、直面した場合にどうするか、調べたり家族と話し合ったりすることが重要です。
  • 親だけでなく、自分の配偶者や子ども、兄弟姉妹、親戚、親の近所の方々や交友のある方々とも、日頃からコミュニケーションをとり、良好な関係を築いておきましょう。
  • 親の住む地域の「地域包括支援センター」の情報を確認しておきましょう。
  • 介護保険制度・介護サービス、両立支援制度の概要を把握しておきましょう。
  • いざ介護に直面したときに急に働き方を変えるのは難しいため、今から、業務改善に取り組み、効率的に働き成果を上げる工夫を試みておきましょう。

介護に直面したときのポイント

働く人の多くが親の介護や介護と仕事の両立に不安を抱いていますが、実際に介護に直面した際に勤務先に相談している方の割合は、極めて低い水準です。
職場に相談しないまま、離職してしまう方も少なくありません。
仕事と介護の両立は難しいから離職するしかない、と思われるかもしれませんが、介護のために離職すると、精神的、肉体的、経済的な不安が増加することが多く、介護に専念しているにも関わらず負担が増しているのが実情です。介護離職で楽になるわけではないのです。

もしも介護に直面したら、人事担当者や上司に、「介護について課題がある」「介護に直面している」「介護に直面する可能性がある」ことを、早めに伝えましょう。
多くの企業は、社員に、介護に直面しても働き続けてほしいと考えています。
介護の見通しが立たず、何を相談すべきかわからないという段階でも、働き続けることを前提に、現状や当面の予定、不安に思うことや、働き方に関する意向などを、率直に相談しましょう。

  1. 職場に「家族等の介護を行っていること」を伝え、必要に応じて勤務先の「仕事と介護の両立支援制度」を利用する。
  2. 介護保険サービスを利用し、自分で「介護をしすぎない」
  3. 介護保険の申請は早めに行い、要介護認定前から調整を開始する。
  4. ケアマネジャーを信頼し、「何でも相談する」。(下段「ケアマネジャーに相談する際に確認しておくべきことチェックリスト」を参照)
  5. 日頃から「家族や要介護者宅の近所の方々等と良好な関係」を築く。
  6. 介護を深刻に捉えすぎずに、「自分の時間を確保」する。

「ケアマネジャーに相談する際に確認しておくべきこと」チェックリスト

  • 介護に直面した際、最初に介護について相談する先は地域包括支援センターです。
  • 地域包括支援センターでは、介護が必要な高齢者やその家族のために、介護サービスや日常生活に関する相談を受け付けています。
  • 要介護者のケアプランを立てるケアマネジャーも、地域包括支援センターや市区町村の窓口で紹介してくれます。

地域包括支援センターとは

地域包括支援センターは、中学校の通学区域におおよそ1施設ずつ設置されています。
介護サービスの申請などは、介護が必要な「高齢者の居住地」にある地域包括支援センターや市区町村の窓口で行います。事前に、地域包括支援センターや市区町村の窓口の所在地や連絡先を調べておきましょう。

ケアプランとは

要支援認定、要介護認定を受けた人が介護サービスを適切に利用できるよう、その人の心身や家族の状況などを考慮しながら作成する介護サービスの計画書のことです。具体的には、利用する介護サービスの種類や内容、介護サービス事業者などを定めます。

ケアマネジャーとは

ケアマネジャーとは、介護分野における専門職であり、正式名称を「介護支援専門員」といいます。ケアマネジャーの仕事は、介護を必要とする個々の利用者の状況に応じて最適なケアを受けられるようにコーディネートすることです。具体的には、介護を必要とする人や家族の状況を適切に把握することや、ケアプランの作成、介護サービスを提供する施設・事業者との調整、介護サービスが適切に提供されているかどうかの定期的な確認などを行います。

介護される人について

介護のこと

□食事のとり方や耳の聞こえ方、トイレ・排泄の変化
□動く様子(歩き方、歩く速さ、つまずく、転ぶなど)の変化
□物忘れの傾向(同じものを買い込んでいないかなど)・頻度
□既往歴や服用している薬(市販薬を含む)やサプリメント
□かかりつけ医
□子どもに介護してもらうことへの抵抗感の有無
□在宅介護サービスの利用意向
□介護施設への入居意向
□最期はどこで暮らしたいと思っているか

生活のこと

□1日、1週間の生活パターン
□近所の友人や地域の活動仲間の存在
□地域の民生委員や配達員など、家族や友人以外で親の安否を確認できる人の有無
□趣味や楽しみ
□好きな食べ物
□生活に関する不安や悩み

介護する人(あなた自身)について

介護のこと

□あなたの介護に対する考え方
□あなたの介護経験の有無
□あなたが介護を担える時間帯
□介護を分担できる兄弟姉妹・配偶者などの有無
□介護サービスや介護施設を利用すること(親の介護を他人に任せること)への抵抗感の有無

仕事や生活のこと

□あなたの1日や1週間の生活パターン
□あなたの健康状態・通院の有無
□あなたの家庭の状況(配偶者や子育ての状況など)
□あなたの仕事の状況(仕事内容、出社時間・帰宅時間、残業の有無、出張の頻度、転勤の可能性など)
□勤務先の両立支援制度の利用意向

人事担当者や上司との面談を通じて

人事担当者や上司との三者面談を通じ、企業が作成する「仕事と介護の両立支援プラン」を活用して両立プランをつくり、必要に応じて、働き方を調整したり、両立支援制度を活用することで、仕事と介護の両立をはかりましょう。

介護休業は、約3か月間利用できると法律で定められています。
これは、長期間自分で介護をするための制度ではなく、介護の体制作りをする、介護の準備をするための制度です。
利用する場合は、この期間中に介護環境を整え、可能な限り早期に職場復帰することを前提に、プランを立てましょう。
育児・介護休業法で定められた両立支援制度のほか、各企業が独自に導入している制度もあります。
勤務先にはどのような制度や支援体制があるのか、面談を通じて確認しましょう。

介護をしている期間を「キャリアの中断期」とするのではなく、限られた時間でも能力を発揮し成果を上げ活躍できるよう、人事担当者や上司と相談しながら、働き方やリスキリングを検討しましょう。

介護保険サービスとは

私たちは、40歳になると被保険者として介護保険に加入し、保険料を収めます。
そして、介護が必要になった場合は、市区町村が実施する要介護認定の申請をし、介護が必要と認められた場合には、介護保険サービスを受けることができます。
①要介護認定(要支援認定)の申請
②認定調査・主治医意見書
③要介護度の審査判定
④要介護度の認定(要支援1・2、要介護1〜5の7段階)
⑤ケアプランの作成(ケアプランの作成は無料)
⑥介護保険サービスの利用開始

ケアマネジャーとの信頼関係が大切

介護はプロの手でと考え、介護サービスを活用しましょう。
そのためには、信頼できるケアマネジャーを選び、職場の状況や自分の状況などもしっかり伝えて、信頼感を持って相談することが大切です。
もしも、ケアマネジャーとの信頼関係が確立できないようならば、ケアマネジャーはいつでも交代してもらえます。
できる限り早期に、信頼できるケアマネジャーと出会えるように動くことがポイントです。

ケアマネジャーに相談するときは

「ケアマネジャーに相談する際に確認しておくべきことチェックリスト」を確認し、働き続けることを前提に相談しましょう。

「仕事と介護の両立計画」の活用

ケアマネジャーへの相談・やりとりを何度か行いながら、「仕事と介護の両立計画」を検討します。
「仕事と介護の両立計画」は、働く人が仕事と介護の両立が可能となる自身の働き方を自ら計画するものであるため、会社への提出等は必須ではありませんが、上司に介護の状況を把握しておいてもらうために、見てもらった方が良いでしょう。

自分の時間も大切に

介護を深刻に捉えすぎずに、「自分の時間も確保」しましょう。
介護を一人で抱え込んだり、介護のことばかりを考えていると、疲労やストレスがたまり、悲観的になり、介護うつ状態になることがあります。
自分の仕事が休みの日に介護サービスを利用したり、時には親族に介護を任せて休暇を取って旅行に行くなど、息抜きをしましょう。
それは、大切な親をこれからも長期間大切にし続けるため、親のため、でもあります。
介護うつ状態になると、親を憎み、親に八つ当たりしてしまったり、その後自己嫌悪に陥ったりして、悪い方向に向かってしまうものです。
親が大切だからこそ、自分自身の人生も大切にしましょう。

<出典>
厚生労働省資料「平成29年度版「仕事と介護 両立のポイント あなたが介護離職しないために」

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ケンズプロは、パワハラ・セクハラ・ペイハラ・カスハラ等ハラスメント対策や女性活躍推進、採用ブランディングなどを支援する人事コンサルティング会社です。