医療機関・介護・福祉施設における、職員による患者・利用者への暴力・暴言・セクハラ等虐待行為の類型と行為例を、厚生労働省『障害者福祉施設等における 障害者虐待の防止と対応の手引き』(令和4年4月)よりご紹介します。
なお、手引で「障害者」と表記されている箇所を、本ページでは「利用者」に変更しております。
身体的虐待
暴力的行為
- 平手打ちをする。つねる。殴る。蹴る
- ぶつかって転ばせる
- 刃物や器物で外傷を与える
- 入浴時、熱い湯やシャワーをかけてやけどをさせる
- 本人に向けて物を投げつけたりする。 など
本人の利益にならない強制による行為、代替方法を検討せずに利用者を乱暴に扱う行為
- 医学的診断や個別支援計画等に位置づけられておらず、身体的苦痛や病状悪化を招く行為を強要する
- 介助がしやすいように、職員の都合でベッド等へ抑えつける
- 車いすやベッド等から移動させる際に、必要以上に身体を高く持ち上げる
- 食事の際に、職員の都合で、本人が拒否しているのに口に入れて食べさせる、飲み物を飲ませる。 など
正当な理由のない身体拘束
- 車いすやベッドなどに縛り付ける
- 手指の機能を制限するためにミトン型の手袋を付ける
- 行動を制限するために介護衣(つなぎ服)を着せる
- 職員が自分の身体で利用者を押さえつけて行動を制限する
- 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる
- 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する
性的虐待
あらゆる形態の性的な行為又はその強要
- キス、性器等への接触、性交 ・性的行為を強要する
- 本人の前でわいせつな言葉を発する、又は会話する。性的な話を強要する(無理やり聞かせる、無理やり話させる)
- わいせつな映像や写真をみせる
- 本人を裸にする、又はわいせつな行為をさせ、映像や写真に撮る。撮影したものを他人に見せる
- 更衣やトイレ等の場面をのぞいたり、映像や画像を撮影する
- 排泄や着替えの介助がしやすいという目的で、下(上)半身を裸にしたり、下着のままで放置する
- 人前で排泄をさせたり、おむつ交換をしたりする。またその場面を見せないための配慮をしない。 など
心理的虐待
威嚇的な発言、態度
- 怒鳴る、罵る
- 「ここ(施設等)にいられなくなるよ」「追い出す」などと言い脅す、など
侮辱的な発言、態度
- 排泄の失敗や食べこぼしなどを嘲笑する
- 日常的にからかったり、「バカ」「あほ」「死ね」など侮蔑的なことを言う
- 排泄介助の際、「臭い」「汚い」などと言う
- 子ども扱いするような呼称で呼ぶ
- 本人の意思に反して呼び捨て、あだ名などで呼ぶ。など
利用者や家族の存在や行為、尊厳を否定、無視するような発言、態度
- 無視する
- 「意味もなく呼ばないで」「どうしてこんなことができないの」などと言う
- 他の利用者に利用者や家族の悪口等を言いふらす
- 話しかけ等を無視する
- 利用者の大切にしているものを乱暴に扱う、壊す、捨てる
- したくてもできないことを当てつけにやってみせる(他の利用者にやらせる)。 など
利用者の意欲や自立心を低下させる行為
- トイレを使用できるのに、職員の都合を優先し、本人の意思や状態を無視しておむつを使う
- 自分で食事ができるのに、職員の都合を優先し、本人の意思や状態を無視して食事の全介助をする、職員が提供しやすいように食事を混ぜる
- 自分で服薬ができるのに、食事に薬を混ぜて提供する。 など
交換条件の提示
- 「これができたら外出させてあげる」「買いたいならこれをしてからにしなさい」などの交換条件を提示する
心理的に障害者を不当に孤立させる行為
- 本人の家族に伝えてほしいという訴えを理由なく無視して伝えない
- 理由もなく住所録を取り上げるなど、外部との連絡を遮断する
- 面会者が訪れても、本人の意思や状態を無視して面会させない
- その利用者以外の利用者だけを集めて物事を決める、行事を行う。 など
その他著しい心理的外傷を与える言動
- 車いすでの移動介助の際に、速いスピードで走らせ恐怖感を与える
- 自分の信仰している宗教に加入するよう強制する
- 利用者の顔に落書きをして、それをカメラ等で撮影し他の職員に見せる
- 利用者の前で本人の物を投げたり蹴ったりする
- 本人の意思に反した異性介助を繰り返す
- 浴室脱衣所で、異性の利用者を一緒に着替えさせたりする。 など
放棄・放置
必要とされる支援や介助を怠り、利用者の生活環境・身体や精神状態を悪化させる行為
- 入浴しておらず異臭がする、排泄の介助をしない、髪・ひげ・爪が伸び放題、汚れのひどい服や破れた服を着せている等、日常的に著しく不衛生な状態で生活させる
- 褥瘡(床ずれ)ができるなど、体位の調整や栄養管理を怠る
- おむつが汚れている状態を日常的に放置している
- 健康状態の悪化をきたすほどに水分や栄養補給を怠る
- 健康状態の悪化をきたすような環境(暑すぎる、寒すぎる等)に長時間置かせる
- 室内にごみが放置されている、鼠やゴキブリがいるなど劣悪な環境に置かせる。 など
利用者の状態に応じた診療や支援を怠ったり、医学的診断を無視した行為
- 医療が必要な状況にも関わらず、受診させない。あるいは救急対応を行わない
- 処方通りの服薬をさせない、副作用が生じているのに放置している、処方通りの治療食を食べさせない
- 本人の嚥下できない食事を提供する。 など
必要な用具の使用を限定し、利用者の要望や行動を制限させる行為
- 移動に車いすが必要であっても使用させない
- 必要なめがね、補聴器、補助具等があっても使用させない。 など
利用者の権利や尊厳を無視した行為又はその行為の放置
- 他の利用者に暴力を振るう利用者に対して、何ら予防的手立てをしていない
- 話しかけ等に対し「ちょっと待って」と言ったまま対応しない。 など
その他職務上の義務を著しく怠ること
経済的虐待
本人の同意(表面上は同意しているように見えても、本心からの同意かどうかを見極める必要がある。以下同様。)なしに財産や金銭を使用し、本人の希望する金銭の使用を理由なく制限すること
- 本人所有の不動産等の財産を本人に無断で売却する
- 年金や賃金を管理して渡さない。
- 年金や預貯金を無断で使用する
- 本人の財産を無断で運用する。
- 事業所、法人に金銭を寄付・贈与するよう強要する
- 本人の財産を、本人が知らない又は支払うべきではない支払に充てる
- 金銭・財産等の着服・窃盗等(利用者のお金を盗む、無断で使う、処分する、無断流用する、おつりを渡さない。)
- 立場を利用して、「お金を貸してほしい」と頼み、借りる
- 本人に無断で親族にお金を渡す、貸す
- 日常的に使用するお金を不当に制限する、生活に必要なお金を渡さない。 など
厚生労働省『障害者福祉施設等における 障害者虐待の防止と対応の手引き』(令和4年4月)https://www.mhlw.go.jp/content/000944498.pdf
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