厚生労働省は、毎年9月10日から16日の「自殺予防週間」において、自殺防止に向けた集中的な啓発活動を実施しています。
私たちは、生きるために働き、生きていてこそ働けるのに、働くことが原因で生きられなくなる悲劇が、あまりに多く起こっています。
良い仕事は、健康な心から。
社員に上質な仕事を求めるなら、過酷なノルマ、低い賃金、危険や緊張を伴う業務、長時間労働、汚染された職場環境、ハラスメントやいじめが横行し信頼を築けない人間関係などを改善し、健やかに働ける条件を整えることが、事業主にも求められます。
この機会に、忙しい日々でも一度立ち止まって、心の健康を考えてみませんか?
メンタルヘルス不調をもたらす要因
メンタルヘルス不調は、業務量や業務の質、人間関係、環境など、様々な要因により起こります。
厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準」によると、以下のような出来事があった場合に精神障害を発症しやすくなると考えられます。以下のような出来事が頻発している企業では、予防策の強化が求められます。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001140929.pdf
事故や災害の体験
- 業務により重度の病気やケガをした
- 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした
仕事の失敗、過重な責任の発生等
- 業務に関連し、重大な人身事故、重大事故を起こした
- 多額の損失を発生させるなど仕事上のミスをした
- 会社で起きた事故、事件について、責任を問われた
- 会社で起きた事故、事件について、責任を問われた
- 業務に関連し、違法な行為や不適切な行為等を強要された
- 達成困難なノルマが課された・対応した・達成できなかった
- 新規事業や、大型プロジェクト(情報システム構築等を含む)などの担当になった
- 顧客や取引先から対応が困難な注文や要求等を受けた
- 上司や担当者の不在等により、担当外の業務を行った・責任を負った
仕事の量・質
- 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった
- 1か月に80時間以上の時間外労働を行った
- 2週間以上にわたって連続勤務を行った
- 勤務形態に変化があった
- 感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した
- 勤務形態、作業速度、作業環境等の変化や不規則な勤務があった
役割・地位の変化等
- 退職を強要された
- 転勤・配置転換等があった
- 複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった
- 雇用形態や国籍、性別等を理由に、不利益な処遇等を受けた
- 自分の昇格・昇進等の立場・地位の変更があった
- 雇用契約期間の満了が迫った
パワーハラスメント
- 上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた
対人関係
- 同僚等から、暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた
- 上司とのトラブルがあった
- 同僚とのトラブルがあった
- 部下とのトラブルがあった
- 顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた
- 上司が替わる等、職場の人間関係に変化があった
セクシュアルハラスメント
- セクシュアルハラスメントを受けた
上例の出来事が自殺に直結するわけではありませんが、続いたり、重なったり、過去の出来事と絡んだりすることで、自殺リスクが高まります。
企業が講ずるべき対策
精神疾患の発症から自殺までは、あっという間です。異変に気づいてから慌てて対策を講じても間に合いません。また、自殺には至らないとしても、一度発症すると治癒が難しく、期間も相当にかかります。
不調になってからの対応よりも、「予防」が大切です。
複数の相談窓口の整備
ほんの少しだけの不調でも、相談したいときにセカンドハラスメントの不安なく安心して気軽に利用できる相談窓口を、社内外に複数設置しましょう。
定期的な面談の実施
代表者や上司と部下が「腹を割って話す」面談を定期的かつ必要に応じて随時実施しましょう。部下からの話を否定したり遮ったりすることなく傾聴すること、質問や悩みの吐露には丁寧に答えることが大切です。
過重労働の撲滅
業務改善やICT活用等により長時間労働を是正する他、深夜勤務、海外出張、緊張を伴う業務、危険業務などに従事する社員の負担軽減とメンタルケア等を徹底しましょう。
ハラスメントの撲滅
パワハラやセクハラ、カスハラなどが、精神疾患、ひいては自殺の要因となり得ます。利用しやすく迅速に対応する相談窓口の整備や、研修の実施、社内報や規程の活用による意識啓発などを徹底しましょう。
物理的な職場環境の改善
温度、湿度、照度、臭い、色合い、動線などに不快感や非効率性がなく、適切であるか、確認しましょう。環境が心理や精神に与える影響は大きいです。
不調が疑われる部下への声かけ
ため息が多い、ミスが増えた、顔色が悪いなどの不調を見逃さないよう、上司は日々部下との対話を保ち、不調が見られた際には声をかけ、休ませたり受診を勧めたりなどの対応をすることを、管理職に指導しましょう。
ストレスチェック
ストレスチェックが義務付けられていない事業所でも、定期的にストレスチェックを実施しましょう。事業主が職場のストレスを把握するだけでなく、社員が自身のストレスに目を向け心身からのSOSに耳を傾ける機会を作るという意義もあります。
メンタルヘルスチェック
周囲はもちろん、本人も気づかないうちに無理をして不調を来してしまうことがあります。
ラインチェックをしてみて、不調が疑われる部下がいる場合には、本人に声をかけ、対応を検討してください。
業務の量の問題か、質の問題か、働き方に原因があるのか、それとも本人の問題か・・・本人からのヒアリングと、出勤簿や日報などから分析し、問題点の改善に努めます。
精神的な不調がある場合、対応を一歩間違えると命に関わります。
本人と話し合った上で、早急に産業医や専門医へつなぐことも対応の一つです。
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