リーダーの睡眠不足の波及
睡眠が不十分だと、判断力や感情のコントロールが鈍り、生産性が低下したりイライラしたり怒りっぽくなったりすることは、誰もが自分の経験や他人の様子から認識しているところです。
『ハーバード・ビジネス・レビュー2019年7月号』記事「リーダーの睡眠は組織の業績を左右する」(ワシントン大学フォスタースクール・オブ・ビジネス准教授クリストファー M.バーンズ氏著/飯野由美子氏訳)によると、睡眠不足だったり睡眠の重要性を軽視したりするリーダー(上司)は、「忍耐力がなく、怒りっぽく、敵対的であり、結果として人間関係はよくないこと」が、最近の研究でも明らかになった、とのことです。
睡眠不足の上司が部下に虐待的、攻撃的な振る舞いをすれば、当然、部下たちの仕事への専心度は低下します。
部下たち〜チーム全体のパフォーマンスが落ち、業績にも影響を与え得ます。
さらに、准教授の研究では、睡眠不足上司がチームの感情面や振る舞いにも悪影響を及ぼすことがわかったということです。
部下というのは、上司のサインに多大な注意を払い、それに従い自分の行動を修正し、上司の模倣をするものです。
例えば上司が、4時間しか眠っていないと自慢したり、午前3時にメールを送信したり、午前3時のメールに返信しないと責めたり、いつも深夜まで仕事をしている部下をほめたりして、睡眠は重要ではないというサインを部下に伝えると、部下たちも上司に倣って睡眠を取らないことを推奨するようになりますし、自身も睡眠時間が短くなり、睡眠の質も低下します。
すると、部下たちもまた、非倫理的な振る舞いをするようになり、彼らの部下のパフォーマンスも落ちる・・・それが次代へと受け継がれていきます。
パワハラの連鎖が起こり、「ハラスメント文化」が定着してしまうのです。
▲クリストファーM.バーンズ氏インタビュー動画(WSJ Video)
リーダーへの提言、良質な睡眠のために
上司こそ、良質ともに睡眠を改善し、またチームにも睡眠の重要性を伝え睡眠を推奨するべきです。
クリストファ M.バーンズ氏は、リーダーたちに、次のことを提言しています。
- 就寝と起床の時間を常に守る
- 就寝7時間前からカフェインの摂取を控える
- 就寝3時間前からアルコールの摂取を控える
- 就寝3〜4時間前からニコチンの摂取を控える
- エクササイズを行う
- 就寝直前のエクササイズは避ける
- リラクゼーションとマインドフルネスの瞑想を行う
- 午後9時以降はスマートフォンの使用をやめる
- ブルーライトカット・メガネを使う
- 昼寝(パワーナップ)やシエスタを組み込む
- 睡眠追跡装置やアプリを過信しない
- 睡眠障害の治療を受ける
- 部下たちに適切な睡眠行動を促す
モーレツ主義は終わり
睡眠を犠牲にして長時間働けば、確かに多くの成果が得られます。
そうして成長してきたのが、日本です。
しかし、経済成長期から停滞期に入り、量より質、同質性より多様性が重視される現代に、モーレツ主義は適しません。
睡眠を削ることで、仕事の質は低下し、部下のモチベーションは低下し、睡眠不足によるミスや事故が増えるという事実から、目を背けてはいけません。
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