ペイシェントハラスメント発生後、職員のケアと被害者への対応

被害を受けた職員だけでなく、目撃した職員、対応した職員も、精神的ショックやストレスを感じています。

  • 被害を受けた職員は、身体的被害がなくても、精神的被害がある可能性が高い
  • 目撃した職員は、ショックや自責の念を感じ苦しんでいる可能性が高い
  • 対応した職員は、マスコミ取材や警察の事情聴取にストレスを感じている可能性が高い

そのため、メンタルケアを行う体制を整える(院内・院外で、秘密厳守のもと)ことが重要です。

  • 相談体制があること、いつでも躊躇なく相談すべきこと、プライバシーが守られることなどを、全職員に予め周知しておく
  • 治療や通院に必要な時間を確保できるよう勤務時間を調整することが望ましい

院内

相談担当者に相談したり、専門の医師やカウンセラーがいる場合は受診できるようにします。

院外

外部のクリニックと契約し職員が診療を受けられるようにします。

情報発信(共有)が重要

  • 現段階で実行中の再発防止策(警備員を配置した・外来を閉めた、等)
  • 現段階で決定済みの再発防止策のスケジュール(防犯設備の強化・シフトの変更、等)

暴力被害を受けた職員は原則労災扱いとする

  • 使用者である医療機関は、被害者の請求手続きをサポートする

被害者への対応

暴力の影響の把握

  • 暴力はその種類によらず、被害者の自尊心を傷つける。被害者は、自分を価値のない間だと考えたり、暴力を振るわれた方が悪いと思い込むことがある
  • 看護者が患者等から暴力を受けた場合は援助者と非援助者という関係性ゆえに、「自分の対応が悪かったのではないか」、「患者を加害者にしてしまった」、「自分さえ我慢すれば問題にならなかった」等の思考に陥ることがある

事情の確認

  • 暴力が被害者に及ぼしている影響を考慮し、事情の確認や聞き取りを行うタイミングに配慮する
  • 暴力に至った事情を具体的な出来事の流れとして確認する。事情を確認する際は批評や感想をはさまないようにする

傾聴

  • 話を聞くことによる被害者のこころのケアを行う
  • 話しかけやすい雰囲気を作るよう心がけ、いつでも相談に乗る姿勢を被害者に示す
  • 上司が支援的に行うことが望ましい。セクシュアルハラスメントの場合は同性が望ましい。話を聞く際には以下の点に留意する
    1. 被害者が、自分が話したいこと及び自分の感情を表現することができるようにすること
    2. 身体的な影響を把握すること
    3. 被害者が求めていることを把握すること
    4. 被害者及び加害者の双方にとって最適な問題解決方法を検討する視点で聞くこと
    5. 言葉の暴力やセクシュアルハラスメントの場合は、どの程度の時間的余裕があるのかについて把握すること

ケア

  • 十分な休養と刺激やストレス要因からの保護
  • 継続的な受診(治療) が必要な場合には受診時間を確保する
  • 不眠、食欲不振、その他の精神的な症状は、暴力を受けて数日~数週間後に発生することもあるので注意する
  • 勤務調整(休暇、半日出勤、時差出勤)、業務調整(人と接する業務を避ける等) 等の方法により十分な休養がとれるよう支援する
  • 被害者の希望を確認し、加害者へのケアの提供、暴力被害に遭うきっかけとなった業務等、暴力行為を思い出すストレス要因を避けるよう調整する
  • 専門家によるカウンセリングが受けられるよう支援する
  • 支援

    警察への被害届提出

    • 警察への被害届は被害者本人が行う必要がある。警察への届出、被害届の記述等を支援する

    法的措置をとる場合の支援

    • 刑事訴訟、民事訴訟(損害賠償) 等の法的措置に関する情報提供を行う
    • 加害者との交渉が必要な場合は、被害者の希望に応じて施設管理者、看護管理者等が代理となり対応する

    対応の報告

    • 加害者への対応、組織的な対応、再発防止対策(安全管理体制の改善、マニュアルの改訂等を含む) を被害者に伝え、安心して働ける環境をつくる

    社団法人日本看護協会『保健医療福祉施設における暴力対策指針』https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/bouryokusisin.pdf

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